確実に観ているのですが、すっかり内容を忘れてしまったので改めて鑑賞。俳優陣が豪華すぎて、観ていて気分がいいです(笑)
あらすじ
マンハッタンにある銀行で発生したとある強盗事件。犯人グループは人質に自分たちと同じ格好をさせ、巧みに捜査を撹乱していく。事件を担当する捜査官は交渉の糸口が見つけられず、焦り、困惑していた。「犯人の目的は何なのか?この事件は何かがおかしい」 そして謎の弁護士までもが現場へと姿を現し、有無を言わさず犯人と交渉しだす。前代見聞の「完全犯罪」、その裏に果たして何が隠れているのか?
登場人物紹介
ダルトン……犯人グループリーダー
フレイジャー……現場を仕切る交渉役の捜査官
アーサー……銀行会長
ホワイト……会長に雇われた弁護士
ネタバレありの感想
【冒頭:謎のインド音楽】
オープニングで流れる謎のインド音楽。「CHAIYYA CHAIYYA」という別のインド映画の挿入歌だそうですが、これがまたエキゾチックな雰囲気たっぷりでインパクト大。
流れる映像はアメリカなのに、チェイヤチェイヤとヒンズー語のような男女の声が響くという不思議な感覚。
(ちなみにオリジナル版とはちょっと違うリミックスで、ラップなんかも入ってます。)
実はこのエキゾチックさ、人種の入り混じる感が、映画の全編に結構漂ってるんですよね。人種差別への反抗を思わせる描写も多くて。
【強盗シーン:犯人のキレ者ぶり】
銃を持って押し入る犯人たち。さっさと防犯カメラの機能をつぶし、無駄に発砲することなく全員を人質としてコントロール。
携帯電話を押収する時も、どうにか目を盗もうとする人質を追い詰めていきます。
犯人たちはペンキ職人の格好でサングラスと覆面をしているのですが、まったく同じ格好を人質に強要。これがのちのち重要に……。
【警官たちとの交渉】
ちょっと脛に傷持つ捜査官のフレイジャー。その相棒。いまいち協力しにくい機動隊。
いかにも横の連携が取れてない現場って感じですが、なんとか犯人グループたちと交渉しようと粘ります。
ピザの箱に盗聴器を仕込んだら、マイナー国の政治家の演説を流して妨害されたりして振り回されます。
人質が覆面姿のまま外に出されて、交渉内容を伝えるシーンが何回かあるのですが、
そのうち一人がターバンを巻いたシーク教徒。
機動隊が「うわ、アラブ人だっ」と焦って怒鳴ったり、シーク教徒にとって大切なターバンを警官に取られて憤慨する人質だったり、
人々の根底にある差別意識みたいなものがちょこちょこ織り交ぜられるのが悲しい。
【暗躍する会長&弁護士】
実はこの銀行にはとある秘密があり、会長はその秘密を隠そうと女性弁護士に現場の統率を依頼します。
この女弁護士がまた一癖ありそうな金儲け至上主義者っぽいんですよねぇ。
銀行の貸金庫に眠る秘密の事は、犯人グループも知っているようで……。
この辺から、こいつらもしかして金目的じゃない?と思わせるシーンが多くなります。
一人だけ混じっていた男の子が、GTA的なヤバめのゲームを遊んでいることが分かるシーンがあるのですが
リーダーがそれを見て「こんなひどいゲームやっちゃまずいだろ」みたいな反応をするんですよね。
だけど、人質を見せしめにするシーンもあったりして、謎は深まる一方……。
時折時間軸が飛んで、事件後の取り調べらしきシーンも映ります。
人質を犯人扱いして、焦ったところを炙り出そうとするフレイジャーたちの姿。
果たしてこの後何が起こるのか?
【突入、脱出、そして】
最終的に機動隊は突入を決断。ゴム弾を使用した作戦です。
しかし犯人側がここでも一枚上手で、この作戦をすべて盗聴していました。
最初の最初、要求を書いて渡したものに仕込んであったんです。
もうずっと、警察は犯人の手の上で転がされてたんですね。
そして彼らの突入に合わせ、犯人も人質も見分けのつかない姿のまま全員表へと流れだすように逃げ出します。
ただ一人、ダルトンを残して。
ダルトンは銀行内の物置の奥、棚の後ろに秘密のスペースを作り、そこに隠れたのです。
警察は気付かないまま、無人の銀行を捜査。
そこに残っていたのは、犯人が使ったらしきモデルガン。
見せしめに見せかけるための血糊。
そう、最初から犯人グループには危害を加える気はなかったのです。
無くなったのは、会長の秘密が入った封筒だけ……。
【結局彼らは何がしたかったのか?】
会長の秘密とはなんだったのか?
それは第2次世界大戦中、かなり卑怯な手段で一財産を築いたこと。
封筒にはそれを示すかぎ十字が。今これが公表されれば、彼は戦争犯罪者扱いされるのは確実です。
ここまでは実は結構匂わせる描写がありました。
ここからさらに一歩踏み込んだ秘密。それは同じ貸金庫に残ったカルティエのダイヤモンドです。
これは元はユダヤ人のもので、会長があくどいことをして手に入れた証拠でもあります。
ダルトンは、わざとそのダイヤをフレイジャーが気付くように残しました。
会長と弁護士からの圧力がかかるものの、証拠を握るフレイジャー。
そして封筒を奪ったダルトン。
戦争犯罪の記憶は、風化しないままどこへ向かうのか……。
まとめ
管理人の評価:★★★★☆(星四つ)
どんでん返し系クライムアクションと思いきや、まさかの戦争犯罪イクナイ映画。
インサイド・マンというタイトルなのに「中に潜んで警察をやり過ごした」と言うのが別に大オチじゃない。
スパイク・リー監督が得意とする、人種や差別に関する描写がふんだんに盛り込まれた作品だったわけです。
正直もうちょっとスカッとするオチを期待したんですが、そこまでは行きませんでした……そこだけ残念。
なんというか語られない謎も多く、最後あたりはなかり観る人に解釈を委ねる感じの映画です。
犯人が最初から人質として紛れていたり(服装のせいでこの入り乱れ具合がハッキリ分かるのは中盤以降)
機動隊と交渉班を振り回す戦術がとてもクレバーな感じで、
「頭良い映画」観ている感があるので中盤が一番好きでした。