「いばら姫は恋に落ちない」きたざわ 尋子/yoco
「キタキタ、大好物の両片思いモノじゃー。」と久々に興奮しながら読んだ。男性向けだろうが女性向けだろうが、健気な子が恋愛してるのが好きなんだ。

主な内容&感想(若干ネタバレ注意)

あらすじとしては、汚名を着せられて亡くなった家族の復讐を企んで表の世界から身を隠した主人公(受)を、彼が恋心を抱いていた男が探し当てる話・・・だろうか。
この男(攻)も主人公を強く愛して執着してて、なんとか自分の元に帰ってこさせようと奮闘するという展開。
2人の過去と、受側で現在繰り広げられている復讐劇、攻側が受の手がかりを掴んで接触を図るまで、となかなか複雑な構成になってる。

まさかのハッカーもの
この復讐の方法というのが、ネットを駆使したハッキングものになってて、結構面白い。
というか攻自体が元々ハッキング得意で、受に教えてあげたら才能が開花しちゃったという。
攻も家族を失った辛い過去があって結構ダークな話だった。

綺麗系受と包容力系攻
表紙のイメージ通り、受は綺麗系。ちょっと性格はきつめで、攻以外にはかなりツンツン。
攻は一見さわやか系に見えてかなりの執着系。
完全両片思いだね。

受⇒
「こんな世界は滅べばいい」ってくらい厭世的だけど、攻が困るから駄目だなと思い直すくらい攻が好き。憧れと崇拝が入り混じってる。自分よりも辛い目にあったのに、世を恨まない完璧な人だと神聖視。

攻⇒
世間に対して失望し無感情になっていたが表面上は上手く取り繕っている。受の事を「壊れやすい繊細なガラス細工」だと思っていて、優しく守ろうとする。受に恋するが、受からの好意は純粋なものだから成就しないと誤解してる。

どっちも恋愛フィルターかかりまくっててスゲェ。
攻が受をお姫様扱いするのが好きなんだが・・・この攻はさすがにお姫様扱いはしないけど、守ろうとしてる感じは出てる。個人的にはもうちょっと姫扱いしても良いと思うけど。

萌える上着着せ
本編中で多分一番萌えたシーンが「上着を着せる」シーン。
受が攻と外出するときに、攻にコートを着せるんだよ。昔母親が父親にそうしてたからって。
ここがイラスト入りで描かれててさー。もうほんと嫁だよ。嫁。しかも良妻。
攻が「他の人にはしない方が良い」ってアドバイス(男に変に気を持たせるから)するけど、受は「他ではやらない。攻にはしたいからしてる」ときっぱり。
なにこの頭良いくせに天然ちゃん。
こういうのもあって攻が「受は自分を身内扱いしていて、純粋に慕ってる。しかも神聖視してるから恋愛にはならない。」って誤解すんだよ。
せつないねー。

定番の当て馬的なやつが・・・
BLだともうド定番なんだけど、無駄に二人の恋愛を引っ掻き回す奴がいるんだよな。というか多分この作者さんの作品には多い傾向があると思う。
これだと、受が攻の元を離れてから組んだ男がけっこう受にベタベタな感じ。かなりの大物で金とか権力とか持ちまくってる奴で、変に軽いというかチャラいというか。
BLとかラノベにありがちな、飄々系でムカつく。そんで受のことを気に入ってて変に攻を挑発するんだよなー。まぁ珍しく受に恋愛感情は抱いてないみたいだけど・・・。
正直、この設定いるか!?あんま本筋と関係ないよな!?って思った。
ホント、こういう無駄な引っ掻き回しキャラ、顔面ぶっ飛ばしたくなるからあんまり出さんで欲しいわ・・・。
まぁでも、酷い奴は受にあからさまにコナかけて、靡かないと「おや、残念(微笑)」みたいな展開になって鳥肌が立つくらいキモイから、これはまだマシな方だね。

総合評価

展開が気になる感じで、きちんと読ませる小説だった。
ハッカーもののエッセンスは入れつつ、無駄に硬派ぶってもいなくて読みやすい。
ハッカー集団や、攻のネットワーク検閲職みたいなのは若干ファンタジーだけど、現実離れしすぎずイイ感じ。
両片思いなのは最初から分かり切っているから、中盤はかなり焦れる。
折角再会した攻を受けが愛ゆえに拒絶しようとしたりなー。この辺はもうちょっと受の乙女心をきちんと書いてほしかった。
まぁでもその分、最後の攻めのナイトっぷりが活きてるとも言えるけど。
両片思いとか、溺愛攻が好きな人には十分勧められる面白いBLだった。受も攻だけに対して健気な美人さんで、受の性格重視な自分も大丈夫だったし。